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歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』解説、ネタバレ

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始めに

始めに

 今日は『葉桜の季節に君を想うということ』について感想を書いていきます。

背景知識、語りの構造

ハードボイルド小説のパロディ

 本作は文体、モチーフの点でハードボイルドジャンルを意識していて、当該ジャンルのパロディとなっています。ハードボイルド小説においては、探偵がトラブルに巻き込まれ、アクションによって解決していくというプロット上、主人公の年齢は成人期初期であることが多いですが、本作はそうしたエイジズム的な要素を逆手にとって、実は語り手含むほとんどの登場人物が老人になっています。

 しかしエイジズムへの異議申しだてとはいえ、その象徴が主人公の好色なのはややミソジナスな部分も感じるというか、当該ジャンルの女性蔑視表象に与している部分を感じ、その点ややポランスキー監督『チャイナタウン』などと比べて弱いです。

コンドームトリック、死因偽装

 本作では40年以上昔の遠い過去における事件(実際はその遠い時間的隔たりが隠匿されている)が描かれ、それが成瀬の人格を形成していますが、コンドームを使ったトリックは秀でています。風呂場で見つかったコンドームが体内に飲み込んで麻薬を隠すために使われており、その事実を隠匿するために被害者の腹を滅多刺しにしてコンドームにつつまれた麻薬を取り出したという内容です。

物語世界

あらすじ

 フィットネスクラブで汗を流していた成瀬将虎は、高校の後輩の芹澤清から、彼が想いを寄せる久高愛子の相談に乗ってほしいと依頼されます。愛子は、家柄の手前警察には相談しにくいので、轢き逃げで亡くなった身内が悪徳商法業者・蓬莱倶楽部によって保険金詐欺に巻き込まれていた証拠を掴んで欲しいと言います。同じ時期、将虎は地下鉄に飛び込もうとした麻宮さくらという女性を助け、それがきっかけとなり、何度かデートを重ねる仲になります。

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