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殊能将之『ハサミ男』ネタバレ、解説

殊能将之
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始めに

始めに

今日は殊能将之『ハサミ男』について解説を書いていきます。

語りの構造、背景知識

等質物語世界の語り手の性質の誤認

 本作品では綾辻『十角館の殺人』同様、あだ名を効果的に生かして、等質物語世界の語り手の正体を誤認させています。ハサミ男である「わたし」の語りと、警察サイドに焦点化が図られる異質物語世界の語りで物語が進行していくのですが、警察の疑う死体の第一発見者である「日高光一」=「わたし」であるかのように読者は錯覚させられます。しかし、実際は「わたし」=安永知夏という女性です。「わたし」は、ハサミ男が殺害したと偽装された死体の第一発見者となりますが、その後すぐに日高も発見しています。読者は死体の第一発見者が「わたし」だと知っているので、「わたし」を「日高光一」と誤認します。

 日高はまた太っており、かつシリアルキラーは「ハサミ男」というあだ名でまかり通っているため、その性別が男であると読者は誤認させられます。

読み物としての魅力

 殊能将之はメフィスト賞作家の中でもまず間違いなく最大クラスの才能ですが、本格ミステリよりはサスペンスなどの読み物が得意な作家です。本作も『ケイゾク』や『羊たちの沈黙』のようなサイコホラーと叙述トリックをうまく組み合わせており、ユーモアとホラーの匙加減も絶妙です。

 殊能は小島信夫や後藤明生のようなバロック的な機知が冴え渡る作家で、『黒い仏』なども優れています。

物語世界

あらすじ

 東京。女子高生2人が同様の手口で殺害される事件が発生しました。喉にハサミが刺されていたことから、マスコミは犯人を「ハサミ男」と命名。ハサミ男は連続猟奇殺人犯として注目されるようになります。

 一方、ハサミ男は3人目の犠牲者を選び出し、調査を行っていました。しかしその調査の中で、自分の手口をそっくり真似て殺害された犠牲者の死体を見つけることに。先を越されてしまったハサミ男は、誰が殺害したのか調べます

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