始めに
始めに
有栖川有栖『女王国の城』についてネタバレ解説を書いていきます。
語りの構造、背景知識
クイーン風の消去法
銃声をかき消すために十時の花火の打ち上げに合わせて子母沢殺害が行なわれたことから、犯人の条件が二つ明らかになり、(1.犯人は昨日の十時に〈スターシップ〉が試験的に上がることを事前に知っていた人物である。2.犯人は十時の時点でアリバイがない人物である。)また凶器の拳銃の入手ルートから、3.10年前にこの土地にいて子供時代を過ごした人物である、という3つ目の条件が導かれています。クイーン『Zの悲劇』のような消去法による犯人当てになっています。
凶器の銃
十一年前の事件の拳銃が凶器として使われているため、城の厳重な警備を考えればそれが「聖洞」というから持ち込まれたことは予想しやすく、聖洞を映したビデオテープが持ち去られたことにも理由が見つけられます。
しかし、聖洞の反対側の出入り口になっている小さな穴を通って、聖洞の中途まで持ってきたのだということがアリバイトリックによって示され、そのために10年前にこの土地にいて子供だったという条件が提示されます。
意外な動機
犯人の動機は予言を成就させないための犯行というものです。死後硬直によって弘岡の死亡時刻を遅らせるトリックが、アクシデントによって予言が成就したことを隠蔽するためのものになっています。
物語世界
あらすじ
大学に姿を見せなくなった江神二郎を心配し、残された英都大学推理小説研究会のメンバーたち(望月周平・織田光次郎・有栖川有栖[アリス]・有馬麻里亜[マリア])は、江神の行き先である長野県と岐阜県の県境、木曽山中の神倉に向かいます。そこは宇宙から来る救世主を信仰する新興宗教団体「人類協会」の聖地です。人類協会は21歳で代表に就任した野坂公子が「神倉城の新女王」と騒がれていました。
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