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東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』ネタバレ解説

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始めに

始めに

 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』について解説を書いていきます。

語りの構造、背景知識

等質物語世界の語りを異質物語世界の語りと誤認させ、それによって第二次の語りを第一次の語りと誤認させる

 本作の特徴は等質物語世界の語りを異質物語世界の語りと誤認させるトリックで、麻耶『』と同様です。

 役者の座を笹原・本村・雨宮に奪われたと考え恨み、復讐を誓った麻倉雅美が本多に自分の台本を基に殺人を依頼しており、麻倉は監督の東郷の名を語り7人のオーディション合格者をペンションに集め、雪山に閉じ込められている設定で4日間外部との連絡を取らせないようにします。そこで殺人事件を模した犯行が行われ、一人また一人とペンションから居なくなっていきます。参加者は被害者と犯人は東郷監督のシナリオに従っているだけだと楽観しますが、血の付いた凶器と底が見えない井戸が発見されて事態はシリアスな展開に急変します。しかし、これらは麻倉を欺くために、本多が笹原・本村・雨宮と計画した偽装殺人でした。というのが主な筋です。

 そして探偵役である久我和幸という等質物語世界の語りと、異質物語世界の語りに見せかけられた麻倉による語りが交互に展開されます。麻倉はマジックミラー越しに山荘の様子を伺っており、本多が計画通り、ターゲットを殺害したものと認識しています。しかし実際にはこれは麻倉を欺くための狂言殺人です。麻倉の存在が隠匿され、異質物語世界の語りとして誤認されることで、「地の文」に見せかけられた部分で堂々と物語世界の事実と異なる内容が記述されています。

狂言犯罪トリック

 本作品はまた、真犯人を炙り出すための狂言犯罪トリックが展開されています。本作では、麻倉はマジックミラー越しに山荘の様子を伺っており、本多が計画通り、ターゲットを殺害したものと認識していますが、実際にはこれは麻倉を欺くための狂言殺人です。

物語世界

あらすじ

 俳優を目指している青年・久我和幸は、劇団「水許」で女優をしている元村由梨江に一目惚れしたことから、彼女になんとか近づこうと考えて、実力派の劇団である「水許」の次回作の出演オーディションを受け、300人の応募者の中からただ一人、劇団員以外からの合格を勝ち取ります。オーディションから一ヶ月後、演出家である東郷陣平から手紙が届き、そこには、乗鞍高原のペンションにて出演者の打ち合わせのための合宿があること、さらには「誰かに口外したり欠席をした者は、オーディションの合格を取り消す」と書かれていました。

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