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三津田信三『首無しの如き祟るもの』ネタバレ解説

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始めに

始めに

三津田信三『首無しの如き祟るもの』についてネタバレ解説を書いていきます。

語りの構造、背景知識

性別誤認による入れ替わり

 本作品は二重の性別誤認トリックによる入れ替わりが展開されています。「長寿郎」と「妃女子」の入れ替わりと、そして女性でありながら男性に見せかけられていた「長寿郎」に加えて、男性でありながら女性の筆名を使っていた江川蘭子が登場することで二度の入れ替わりがなされています。

 長子である男子を守りそうでないものに祟る淡首様の存在があるため、妃女子は「長寿郎」として、長寿郎は「妃女子」として育てられていました。なので「妃女子」が十三夜参りの時に死んだ時、本当に死んでいたのは長寿郎でした。

 婚舎の集いで殺され、首無し死体として発見されたのは毬子ではなく長寿郎でした。殺したのは毬子です。「長寿郎」は実は妃女子(女性)なので、毬子は自分が殺されたようにに偽装することが可能でした。次に殺されたのは蘭子で、蘭子は女性のペンネームを使用している男性であり、長寿郎に偽装させることが可能でした。毬子は長寿郎、蘭子と2回入れ替わり、蘭子を演じることで婚舎から脱出しました。

手記の記述者が犯人

 綾辻『迷路館の殺人』に関する記事でも述べましたが、本作は作中作「媛首山の惨劇」が発展して『首無しの如き祟るもの』が成立したという体裁になっています。作中の事実をもとに作中作「媛首山の惨劇」をものしたのは「媛之森妙元」なる女性ですが、彼女は「媛首山の惨劇」を書いている途中に「媛首山の惨劇」にも登場する江川蘭子(になりすました毬子)に殺され、斧高という少年を犯人に仕立て上げる意図で江川がある時から「媛首山の惨劇」を書き継いだのち、斧高が復讐のために真犯人・蘭子を告発するべく「媛首山の惨劇」において真実を執筆させ、その後蘭子が斧高に殺害されるまでに記した遺稿をもとに『首無しの如き祟るもの』が書かれたという構成になっています。

 

物語世界

あらすじ

 奥多摩の媛首村には、首を斬られて亡くなった女の怨霊「淡首様」の伝説が伝えられていました。その「淡首様」に祟られているという地主・秘守家で怪事件が起こります。

 十三歳になった子供が行う儀礼「十三夜参り」の夜、本家の跡取りである長寿郎に続き井戸で禊ぎを済ませたはずの双子の妹・妃女子が、井戸の中で死んでいました。そして十年後。成人した長寿郎が三人の花嫁候補から一人を選ぶ「婚舎の集い」の最中に、候補の一人が無惨な首無し死体となって発見され、長寿郎が現場から失踪します。

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