始めに
始めに
アガサ=クリスティ『ABC殺人事件』について解説を書いていきます。
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語りの構造、背景知識
木を隠すなら森へ
本作品はチェスタトン「折れた剣」を思わせる、全体論的構造の中に一個の事件を隠すことで本来の動機を見えづらくするというトリックになっています。本来犯人が殺したいのは特定の人物一人だけなのですが、連続殺人事件の被害者として認識させることで、遺産相続というわかりやすい殺害動機をもつ事件関係者のその動機が見えづらいものになっています。
この連続殺人に一個の殺人を隠すトリックはその後、坂口安吾『不連続殺人事件』、デアンドリア『ホッグ連続殺人事件』などに受け継がれます。
物語世界
あらすじ
ポアロの元に、文末に「ABC」と署名された挑戦状が届きます。そして挑戦状の通り、Aで始まるアンドーヴァーの町で、イニシャルがA. A.のタバコ屋の老女アリス・アッシャーの死体が発見され、傍らには『ABC鉄道案内』が添えられていました。
警察は当初、彼女が夫と不仲であったため、夫を疑います。間もなくABC氏からポアロの元に第2・第3の犯行を予告する手紙が届き、Bで始まるベクスヒルでイニシャルがB. B.の女性、Cで始まるチャーストンでイニシャルがC. C.の富豪が殺害され、やはり死体のそばには『ABC鉄道案内』が置かれていました。
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