PR

筒井康隆『残像に口紅を』解説あらすじ

筒井康隆
記事内に広告が含まれています。

はじめに

 筒井康隆『残像に口紅を』解説あらすじを書いていきます。

語りの構造、背景知識

ウリポの影響

 『e』が全く使われていないジョルジュ=ペレックの『煙滅』に刺激され、文字がひとつずつ消えていく小説という着想を得て、本作がものされました。

 ペレックはウリポの作家です。ウリポ は、数学者のフランソワ=ル=リヨネーを発起人として設立された文学グループでした。アルフレッド=ジャリ、レーモン=クノー、レーモン=ルーセルらの文学を理想としました。

 傾向として、モダニズムのなかにもともとキャロル(『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』)、ジョイスなどを参照する言語的遊戯に着目する文脈があったところ、このグループは数学という形式科学の知見を背景にして、アルゴリズム的な手続きに従って言語による創作を展開することで、言語的遊戯を展開しました。

 本作もリポグラ厶という手法が用いられています。

語りとルール

 本作の語りのルールです。

 日本語表記の「音」を1つずつ消し、その音の含まれていることばは使えなくなり、別のことばでもそれが表現できなくなった場合、その存在が消えます。
 母音がなくなってもそれにつらなる子音は無くならないものの、長音の音引きはなくなります。
 拗音も促音も同時に無くなるものの、濁音や半濁音は別々です。母音に濁点をつけたものは別です。

 助詞の「は」は、「は」と発音する時は「わ」が消えても残ります。「へ」も同じです。同音異字は同時に無くなります。

物語世界

あらすじ 

 現実そのものが虚構だと考える作家佐治勝夫は、世界から日本語の音が消失していくという小説を書き始めます。
 やがてそれに呼応するように、佐治の周囲の世界でも音とともに存在が消えていきます。音が消えると、その音を含むものも消えてしまうのです。

 次第に飲食店のメニューが極端に少なり、妻や子供たちも消滅します。

 やがて小説の文章は単語の羅列になり、最後には全ての音と存在が消滅します。

コメント

You cannot copy content of this page

タイトルとURLをコピーしました