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筒井康隆『ロートレック荘事件』解説、ネタバレ

筒井康隆
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始めに

始めに

筒井康隆『ロートレック荘事件』についてレビューを書いていきます。

語りの構造、背景知識

等質物語世界の語り手「おれ」の二人一役

 物語は「おれ」という等質物語世界の主体により語られますが(立原絵里が語り手となる第十五章を除く)、この「おれ」は章によって「浜口」修であったり浜口「重樹」であったりします。犯人は「重樹」ですが、犯行時刻の語りは浜口修のものであり、浜口修にはアリバイがあるため、おれは犯人ではない、つまり、浜口重樹は犯人ではない、とミスリードする仕掛けになっています。

 読者にとって「おれ」は、「濱口重樹」で、体が小さくて、画家で、エッセイなども書き、3人の女に愛されている存在です。しかし実際には語りの「おれ」は牧野寛子と立原絵里から好意を持たれている画家の濱口と木内典子から好意を持たれており、体が小さく、エッセイなども書く美術評論家の重樹が交互に務めている。このように「おれ」に読者が抱くイメージは二人が混ざっています。

等質物語世界の語りによる二人一役の類例

 等質物語世界の語りによる二人一役の類例には乾くるみ『イニシエーション=ラブ』があります。あちらではそれによって時間の前後関係を誤認させるのが主眼でしたが、本作における二人一役トリックは片方(修)の存在が隠匿されることで、もう一方(重樹)の犯行時期のアリバイを担保します。

物語世界

あらすじ

 夏の終わり、木内文麿氏が主であるロートレックの作品に彩られた、郊外の瀟洒な洋館「ロートレック荘」に集まった青年たち。優雅なバカンスのはずが、2発の銃声で悲劇が始まります。美女の死体が発見され、警察が別荘にやって来て監視を強めていたにもかかわらず、1人また1人と美女が殺されていく…

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