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綾辻行人『奇面館の殺人』解説、ネタバレ

あ行の作家
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始めに

始めに

 今日は綾辻『奇面館の殺人』についてレビューを書いていきます。

語りの構造、背景知識

叙述はやや抑えめ。動機の解明

 本作は綾辻『館』シリーズの一作です。『館』シリーズでは叙述トリックがしばしば見られますが、本作は叙述トリックは抑えめで、ミステリ要素はもっぱらなぜ関係者の顔に鍵付きの仮面がつけられたのかという動機と、関係者の名前に関するサプライズにあります。

異質物語世界の語り、内的独白。顔のない死体

 本作は館に招かれた全員の名前が影山逸史であり、それによって亡き父、影山透一のことに思いを巡らせる内的独白の主である焦点化人物の性質を先代の〈奇面館〉の主人・影山逸史であると誤認させるトリックが仕掛けられています。

 また、全員の顔に仮面がつけられるという状況によって、首を切断されて殺された先代の〈奇面館〉の主人・影山逸史が、他の人物と入れ替わっているというミスリードがなされています。

犯人当て、傷跡隠匿トリック

犯人あては館の二代目が犯人というのが途中明らかになったことから、館の過去の遺物について知っていた人間が犯人ということになってます。

 全員につけられた仮面の理由は、被害者からつけられた爪による傷跡を隠すためという理由になっています。全体的に手堅い内容です。ただ、犯人当てにに関してはかなり消極的なヒントのみであるため、難易度は高いです。

類例

 同姓や同名による人物誤認トリックは乾くるみ『イニシエーション=ラブ』などにも見えます。この作品では二人の鈴木が別人で二人一役となっています。

 仮面による傷跡隠匿トリックは『逆転裁判3』などにも見えます。こちらでは、誇張的でデフォルメ化された世界観のなかで、常に仮面をつけているというキャラクターの非現実な描写が違和感なく描かれています。

物語世界

あらすじ

 1993年3月末、推理作家の鹿谷門実は、日向京助から、4月3日より富豪・影山逸史の別荘で開かれる1泊2日の集まりに自分の身代わりとして出席してほしいと依頼されます。会場となる別荘・奇面館を因縁のある中村青司が手掛けたことを知った鹿谷はその依頼を承諾し、東京都下の僻地にある奇面館へと向かいます。奇面館での集まりには、館の主人である影山逸史と同じ年齢や類似した生年月日といった共通項を持った人物が6人招待されていて、影山が人の表情と向き合うことに恐怖しているという理由から、自室以外では秘書やメイドたちは能面で、招待客は頭全体を覆う特別な仮面で顔を隠すルールが設けられていました。奇面館での1日目は何事もなく終わりますが、翌朝に影山と見られる頭部と両手の指が欠けた死体が発見され、しかも招待客たちが睡眠薬で眠らされている間に仮面をつけられ、鍵を掛けられて外せなくなっていました。

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