始めに
始めに
岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』ネタバレ解説を書いていきます。
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語りの構造、背景知識
等質物語世界の語り手による犯人トリック
本作品の語りの特徴は、等質物語世界の語り手・俺は殺人事件の犯人であるのですが、そのことを認識していないという点です。語り手が犯人という点ではクリスティ『アクロイド殺し』と共通しますが、語り手である犯人が故意に真相を隠匿する記述をしていたのに対し、本作では語り手は自身が犯人であると認識していないため、自分は犯人ではないというモノローグを展開しており、これがミスリードになっています。
『アクロイド殺し』に関する記事でも触れましたが、このような設定の犯人を導入する上ではフェアネスと記述の合理性の両立が困難でもあります。本作ではしかし、自身が犯人だと認識していない語り手という設定により、モノローグによる潔白の表明に語り手の意図としての合理性が与えられています。
即死殺人
急所の呼吸中枢を刃物で刺すことで即死させるという殺人トリックが設定されています。
それほど珍しいトリックではないものの、無意識の殺人者を設定するのにこれを用いています。
物語世界
あらすじ
富豪の若きひとり娘が事故で不審死してから3ヵ月。娘の母親は、彼女の遊び仲間だった男女4人をそれぞれ自宅へ招き眠らせ、彼らを地下シェルターに閉じこめます。
地下シェルターの中で目覚める4人。母親は4人が娘を殺したと考えています。あの事故の真相は何だったのか。4人は死にものぐるいで脱出を試みつつ、彼女を殺したのは誰か仲間4人同士で疑いを始めます。
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